【質問】
3歳のお嬢様のアトピーに悩むの方から、以下の問いあわせをいただきました。
1.Advantan Ointment は、ステロイドの強さとしては、どの程度でしょうか?(日本の段階で)
2.Diprosone は、ステロイドの強さとしては、どの程度でしょうか?
3.モクタール(日本)はオーストラリアで販売されていますか?
【質問全文】(細部を省略・変更して掲載しています)
3歳になる娘のアトピーが全身に広がって困っています。
皮膚科などからAdvantan Ointmentをすすめられて
ひどいときにはつけていますが、日本でいうとどの段階のステロイドかご存知ですか?
私自身指のアトピーにDiprosoneをつけていて、これも少量であれば娘の足や手につけていいと言われて時々つけていましたが、どの程度のステロイドなのか不安です。
あと、モクタールはオーストラリアでは販売されていますか?英語名はなにかご存知でしょうか??
【回答】
<Advantan (R) Ointment について>
Advantan (R) は、Methylprednisolone 0.1% *1というステロイドのお薬です。
外用ステロイド剤の強さについては、オーストラリアでは、Mild、Moderate、Potent、Very Potent4段階に分かれており、Methylprednisolone 0.1%は、Potentに分類されています。
このMethylprednisoloneは、アトピーが結構ひどい状態のときに使われており、お子様の状態を案じられるお母様の気持ち、お察しいたします。
日本では、外用ステロイド剤の強さについて、ウィークWeak、マイルドMild、ストロングStrong、ベリーストロングVery Strong、ストロンゲストStrongestの5段階に分かれています *2。
Methylprednisoloneは、外用剤として日本では販売されていませんので、残念ながらどの段階に分類されているとは申し上げられません。
オーストラリアで、同じ分類Potentに属しているステロイド外用剤、betamethasone valerate 0.1%や、mometasone 0.1%は、日本ではストロングStrong、ベリーストロングVery Strongに分類されていますので、その位に分類されると思うといいと思います。
<Diprosone (R) について>
Diprosone(R) は、Betamethasone dipropionate 0.05% *1というステロイドのお薬です。
上記の通り、オーストラリアの外用ステロイド剤の強さの分類、Mild、Moderate、Potent、Very Potent4段階のうち、Betamethasone dipropionate 0.05%は、Methylprednisoloneと同じく、Potentに分類されています。
また上記の通り、日本の外用ステロイド剤の強さについて、ウィークWeak、マイルドMild、ストロングStrong、ベリーストロングVery Strong、ストロンゲストStrongestの5段階に分かれています。
Betamethasone dipropionate は、日本の製品は0.064%で、オーストラリアの0.05%より少し高い濃度で販売されており、分類としてはベリーストロングVery Strongに分類されています。
<モクタール(R)について>
モクタール(R)は、アカマツやクロマツなどの木部を原料として日本で販売されていたクリームですが*3、最近、販売中止になったと聞いています。
オーストラリアでは、これと同じ成分を元にした商品、Pinetarsol(R)があります *4。
商品は、クリームではありませんが、Bath Oil、Solution、Bar、Gelがあります。
Bath Oilは、そのままですが、お風呂に入れてつかう商品です。
Solutionは、石鹸の代わりとして、またBath Oilのように桶等にはった水に入れてそこに患部を入れるという方法で使えます。
Barも、石鹸の代わりとして使える固形タイプのものですが、Solutionよりも洗浄力がほしいという場合のものです。お嬢様の場合には、洗浄よりも保湿が必要な状態でしょうから、Barよりは、Solutionの方がお薦めです。
Gelは、きっと一番ご希望に近いものだと思います。入浴後など、好きなときに塗って使っていくタイプのものです。
もし、Pinetarsol(R)をまだ使ったことがないようでしたら、ぜひ使用してみてください。
だいたい、どこの薬局でも置いていると思います。
アトピーの患者さんへのアドバイスではなかったのですが、Pinetarsolについて以前の記事で少し書いたことがありますので、一応ご参考までに記載しておきます。
Q&A Pinetalsolオイルの入手(日本)
<Pinetalsolの主成分のお薬>
<Pinetalsolの主成分の入浴剤>
Q&A メンソレータムのメディクイックの妊婦さんの使用について
<かゆみ対策について>
・Pinetarsol
<専門家での診察>
ご質問中でも、皮膚科とおっしゃっていたので、お嬢様は皮膚の専門家の先生に受診されていらっしゃることと思うのですが、上記ステロイド剤の使用については、皮膚科以外の先生も関わっているのでしょうか?
もし開業医の先生(GP)だけで、皮膚科専門医の先生の診察を受診されていらっしゃらないのでしたら、すぐに開業医(GP)に紹介していただいて、専門家に診ていただくことをおすすめします。
また、もし専門家の先生の他、開業医の先生(GP)等で、各々での指導が出ているようでしたら、重複してしまったり、指導に統一性がなくなってしまうこともありますので、できるだけ皮膚科の先生の指導だけにして、ステロイドを使用していくことをお薦めします。
上記の通り、お嬢様にお使いいただいているステロイドの薬は、弱いものではなく、お母様がお嬢様のステロイドを使っていくことへの不安も心からよく理解できますが、専門の先生の元で処方されているのでしたら、その指導に従って使用していくことを強くお薦めします。
お母様のお気持ちも同じ事と思いますが、何より大切なことは、症状を早く落ち着かせていくことです。そのために、強めのお薬が必要なこともありますが、長期的に考えていくと、使用した薬の量が少なくて済むということがあります。私の印象ですが、こちらの皮膚科専門の先生は、その点なども全て含めて指導をされていますので、安心して従っていくといいと思っています。
<保湿剤>
あたり前のようなことで、すでに行っていらっしゃることと思いますが、薬は1日1回など決められた回数しか使用できませんが、保湿剤はいつでも1日何回でも使用できます。
QV Intensive Body Moisturiserなどの保湿性の優れた保湿剤を頻繁に使用して、保湿を心がけてあげてください。
<Wet Dressing法>
Q&A おむつかぶれの薬 AZsとは?(日本)の<Wet Dressing法>でも記載しております、Wet Dressingは、先生から指導を受けていますか?
上記記事のリンクで友人が、専門家の先生から指導された方法を記事にしていますので、参考にしてみてください。3歳のお子様ですと、ボディスーツという訳にはいかないと思いますが、基本的には同じです。
もう少し大きなお子様へのWet Dressing法については、The Children's Hospital at Westmeadの以下のWebサイトで紹介されています。
サイトでは包帯を使ってぐるぐる巻にしていますが、サイトの最後にも書いてありますように、綿のシャツでも同じようにできます。
http://www.chw.edu.au/parents/factsheets/wet_dressing.htm
試してみる前に申し上げておきたいのは、このWet Dressing法を薬の塗布した後にすると、皮膚からの薬の吸収率が上がります。そのため、もしこの方法を試したことがないようでしたら、保湿剤だけを使用したときに、まず試してみてください。
ステロイドの薬を塗布した時については、特にお嬢様は強めの薬を使用されているので、専門の先生に先に相談することをお薦めします。
<洗濯洗剤他、生活の身の回り>
以下の乳児湿疹の記事の<洗濯洗剤他、生活の身の回り>の項目で、洗剤等について見直すことなどについて記載していますので、参考にしてみてください。
http://auspharm.exblog.jp/10585520/
上記の例の場合には、お子様が乳児ということで、重曹だけでの洗濯もいいかと思います。お嬢様のように3歳となると、重曹だけでの洗濯ではもしかすると足りないかもしれません。
その場合には、もうひとつ以下の記事やリンク先を参考にして、過炭酸ソーダ、Napi San (R)を少し加えて洗濯して、洗剤なしで洗濯していくというのもひとつの方法だと思います。
http://auspharm.exblog.jp/12227695/
他、ひとつ上の上記の記事内でも書いていますが、合成繊維ではなく、皮膚に当たるものは綿だけにするなど、気をつけるだけで症状が変わってくることもありますので、もし実行されていらっしゃらないようでしたら、参考にしていただければと思います。
最後になりましたが、私の都合でお返事が遅れたことをお詫びいたします。
少しでも早くお嬢様のアトピーが回復に向かっていくといいですね。
また何か追加質問などありましたら、ご連絡ください。
*1 Australian Medicine Handbook 2009
*2 治療薬ハンドブック, 高久史麿 監修, じほう 2008
*3 おくすり110番 http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se26/se2654700.html
*4 http://www.pinetarsol.com.au/