【質問】
オーストラリアで薬剤師になりたいという方から主に以下の質問をいただきました。
私のオーストラリアでの仕事取得、転職の経緯(薬局から病院へ)
【質問 全文】(2項目に分けて記載するため、細部について省略・変更しております)
私は日本で薬局薬剤師として働いていましたが、最近オーストラリアに移住してきました。将来はオーストラリアの薬剤師資格を取得したいと考えています。まずOET試験を、その後APC試験を受けるつもりです。その前にこちらの薬局制度や医薬品の使われ方等を理解する為にワークエクスペリエンスをしようと思い、最近1つの薬局で働くことができるようになりました。
そこで質問なのですが、よろしければ薬局、病院で働くようになった経緯を教えてください。
薬局で働く前はguild主催のファーマシーアシスタントコースを受講なさったのでしょうか?
どうして薬局から病院へ転職なさったのですか?
【回答】
<薬局で働くまでの経緯・薬局アシスタントの資格の必要性>
今目指している方向はご質問の方と一緒で、ここで薬剤師になることなのですが、私は元々オーストラリアに永住者として来豪した訳ではなく、旦那の仕事の関係で一緒に来たので、この先、何年オーストラリアに滞在するのか今もって分からない状態でいます。
当初2、3年の予定で2003年9月に来豪しましたが、その先延長するかもしれないということになり、こっちの薬局を見てみたいという気持ちで、2005年4月頃から仕事探しを始め、ラッキーなことに1ヶ月後くらいに薬局アシスタントの仕事を得ることができました。
まずお話しなければいけないのが、州によって規制、状況が変わってくるということです。
私の住んでいる地域ACTでは、ご質問中にありましたPharmacy Assistantの資格がなくても、働くことができます。しかし、NSW、VIC、QLDの大きな都市になると、資格がないとAssistantとして働くことも難しいので、取得が必須になってくることと思います。
これをご覧になる他の方のために追記しておきますと、上記アシスタントのためのコースは、
The Pharmacy Guild of Australiaが提供しているPharmacy Assistant Trainingのコースです。
http://www.guild.org.au/training/content.asp?id=984・Introductory/Pre-Employment Training
・Pharmacy and Pharmacist Only Medicines Training
・Accredited Training
* Certificate II in Community Pharmacy
* Certificate III in Community Pharmacy
* Certificate IV in Community Pharmacy
・Dispensary Assistants Training
上記のうち、一般に資格として言われるのは、Accredited Trainingの「Certificate II
又は III in Community Pharmacy」のことです。例えば、「Certificate II 」の内容は、「Pharmacy and Pharmacist Only Medicines Training」の一部で含まれており、コース期間は約1年です。
Community Pharmacyでの経験があり、Dispensingの経験まである人の場合ですと、その経験を考慮し、Pharmacy Guildからの電話による質問・回答等で経験を認められ、「Certificate III 」からスタートすることができる人もいます。
上記の通り、私の住んでいる地域では資格はいらいないのですが、それでも仕事を得るのは難しいと言われており、容易な訳ではありません。
でも仕事を見つけるというのは、薬局に限らず、本当に人との出会い、縁によるものが多いと思っています。いい縁に巡り会えれば、仕事の機会も得られると思うので、あきらめずにがんばってみてください。
ご質問の方の質問の詳細にもあったのですが、経験(イクスピリエンス)、職場経験という制度があります。私の理解では、経験(イクスピリエンス)、職場経験というのは、そのために政府登録しているところだけが、その制度を通して、一定期間のみ行えるようになっているものです。それは、一般の職場で、ただ人材が欲しいというために、無給で働かせないようにするためです。
ここで、仕事の手がかりを探すのはとても大変なことなので、そのような機会をいただけるのは有り難いことですが、きちんと法に則って雇ってくれる職場の方が、後々の経験、ステップアップも考えていただけると思うので、注意してください。
ちなみに、病院の薬局アシスタントには、別の資格があります。
病院によって状況が違うようですが、病院でもやはりこの資格がないと働くのは難しいという地域もあります。私の住んでいる地域では、資格は必要ないのですが、地域の薬局での経験、dispensaryの仕事経験がある程度ないと仕事のポジションを得るのはとても難しいという状況です。
Hospital pharmacy technician courses <薬局から病院への転職>
薬局で3年働き、いろいろな仕事を任せてもらえるようになり、みんなと楽しく仕事をしていたので、転職したのは、たまたま縁があり、主に病院のシステムを見てみたいという興味本位からです。
元々臨床試験をやっていたので、病院の臨床試験部門に興味があり、友人の友人に紹介していただき、その部門だけでなく、病院の薬局も見学する機会に恵まれました。
その見学の時に知り合いになった薬剤師に、参加していた薬剤師の継続教育の講習で再会し、そこでアシスタント募集の話があり、申し込んで、運良くポジションを得たという経緯です。
お話しましたように、私はいつまでオーストラリアにいるか分からないという状態なので、余計に、薬剤師になりたいというよりも、滞在している期間に、いろいろなところを見てみたい、いろいろな経験をしてみたい、勉強したいという気持ちで始めたことが多い気がします。
<APCの経過と今>
私は薬局で仕事を始めたときには、次のご質問のAPC(元APEC)の制度があることすら知らず、薬局の薬剤師に教えてもらって知ったというくらいでした。当初英語があまりできなかったということや、仕事や他の事を優先していた時期があり、何より日本で国家試験に合格してから15年程経っており昔の記憶が必要というよりも、臨床面では特に新しく勉強が必要という状態で、この3月に初めてStage1を受験し、合格したところです。
今後、勉強やインターンよりも優先しなければいけないことがあり、先行き未定ですが、今の職場の病院でインターンを申し込んで、面接等しているところです。
<地域の薬局と病院の薬剤師>
少し話が飛ぶようですが、地域の薬局と病院の環境の違いについて書いておきます。
日本でも同じ事がいえると思うのですが、地域薬局での仕事が好きな人、病院での仕事が好きな人と分かれるような気がします。
地域の薬局では、患者さんが主体で、処方箋薬の指導というだけでなく、薬局で販売している薬等で対処できる事に対しては、症状の確認、治療を行います。例えば、風邪などにおいても、症状や合併症等を確認し、薬を選択したり、先生の診察を勧めたりという判断をしたり、マイナーな火傷については、薬局で売っているゲル剤、ドレッシングで処置をする、などです。
日本とオーストラリアの薬剤師の活躍の幅の違いは、地域薬局に大きく出ていると思いますので、日本よりも地域薬局の薬剤師に求められる知識は広いですが、それだけ楽しい面でもあると思います。
それに対し、病院では、地域薬局で対象としている疾患と比べると、もちろん多種、複雑な疾患を対象としているので、その疾患への治療に対して薬の専門家としての知識が必要となってきます。そういう面で、病院では、薬について、というだけでなく、各疾患の治療指針、ガイドラインの熟知が必須となってくるので、臨床薬剤師を目指して勉強していくには、とてもいい環境です。
ただ病院といっても、病院の規模やそこの先生の専門性にもよってくると思います。
私のいる地域では、大きな病院は公立病院で、地域の中心の病院になっていますが、反対に私立病院は公立病院ほど規模が大きくなく、患者さんの疾患も限られているので、臨床を学ぶいい環境にあるとは言い難い状況です。
次に記載していることは細かいことで、先に気にするようなことではないと思うのですが、同じところで働き続けたいと思う方にとっては、職の安定性というのも少し関わってきます。
地域の薬局の場合、薬局のマネージャー、オーナーなどの都合によってくるところがあります。楽しく長く勤めていても、オーナーが変わって大きなグループの1店舗になり、環境が変わってしまい、転職したという薬剤師を何人も知っていますし、マネージャが変わってその薬剤師との相性が合わなくて仕事場を変えたりというのはよくある話です。
それに対し病院では、これも規模や運営によるので一概に言えるものではないかもしれませんが、ある程度の人数がいるとカバーしやすい分、休みが取りやすかったり、母体が安定しており、公立では産休など公務員の制度等のメリットがあるというようなことがあります。
<私の今までの経緯から考えること>
先に書いたように、病院への転職は先に述べましたように興味からでしたが、今となってみると、いい選択をした思っています。
地域の薬局での仕事も好きなので、地域の薬局の仕事を続けてすぐにStage1を受験して、そこでインターンをしてとやっていたら、もしかしたらもう薬剤師になっていたかもしれないですし、それはそれで満足していたのだと思います。
ただ、病院の薬剤師の活躍を間近に見た今は、病棟の薬剤師のような臨床の治療方針的な知識を私ももっと学んでいきたいと強く思っているので、それに気づく機会として、病院の薬局アシスタントの仕事を得てよかったと思っています。地域や状況によって変わってきますので、何とも言えないのですが、病院でインターンの立場を得るには、APCを通して薬剤師になりたい私には、病院の薬局アシスタントの立場は必須だったと思っています。
病院でインターンと一言で言っても、病院によって、システム、仕事の内容、立場など違うものだと思いますが、私の勤めている病院の場合、薬剤師のミーティング、ジャーナルクラブ、若い薬剤師のための月1回の教育とは別に、教育担当の薬剤師がいて週1回インターンだけのための教育時間(1時間)があります。このような点で、仕事をしながら学ぶというだけでなく、病院では教育の時間が設けられているというのも、病院でインターンをするメリットではないかと思っています。
<APCの状況と大学院への進学>
Stage1については、日本で国家試験を受験されたからどれくらい経っているかとぃうことにもよると思います。卒業して、すぐでしたらStage1の試験もずっと楽なのだと思います。
もし薬剤師になってから結構経っていて、オーストラリアで早く薬剤師として一線で活躍したいと思い、いろいろな余裕があるようでしたら、大学院(または大学)に行くこともひとつの選択として考えるといいと私は思います。
その理由は、APECを通して薬剤師になり活躍している人をたくさん知っている一方で、何度もStage1を試して失敗して未だに合格できないという人や、何度か試して合格できず、結局、大学院に進むことを選んだ人をまた結構知っているためです。
結局大学院に行くことを選んだ友人は、大学院での勉強の方がずっと楽だと言っていたくらいです。
大学院のシラバス、科目設定にもよると思います。臨床だけを考えている大学院もあれば、臨床と共に研究部分も必須になっている大学院もあるので、もし大学院に行く場合には、その選択が重要になってくることと思います。
Stage1のテストの難易度は、構造式というような基本的な問題があるからという理由もありますが、Stage2(APCAT)テストよりも大変だとよく話題にされます。
今回の試験の受験者の成績を見ても、受験者の正解率が28%-72%(75%) とあまり高くない上に、だいたいの目安の合格ラインは65%と聞いたことがあります。合格率や、合否以外の自分の成績がどうだったというようなことは分からないのですが、合格率が高くないことは予測されることと思います。
学校にいくと同窓の友達、ネットワークができるというメリットも強いですし、体系的にオーストラリアでの薬学、特に薬物療法学、治療方針、薬の選択など、以前の日本の薬学教育ではあまりなかったことを学べるのでとてもいい機会になると思います。
<薬剤師の需要、仕事場の確保>
オーストラリアの薬剤師の仕事場の確保は、今後はますます厳しくなっていくものと予想されます。以前は、薬剤師不足のところがあったり、そこまでいかなくても、仕事の需要がたくさんあったのですが、今は大学が増え、大学毎の生徒数も増えていることもあり、大きな都市では、病院はもちろんのこと、地域の薬局でも仕事を得るのが結構大変になってきています。そのため、自分がどれくらいネットワークを持っているかというのも大切になってきているように感じます。以下に紹介したMomoさんの病院でも最近1つのポジションの募集に対し、60件以上もの応募があったそうです。
また最近ある薬剤師から聞いた話では、大学を卒業した後、インターンとして引き受けてもらえる場所が見つからず、結局、大学を卒業したのに薬局アシスタントとして働いていて、インターンのポジションを見つかるのを待っているという人もいるそうです。
私の住んでいるACTには、ここ10年以内にできた大学院が1つあり、生徒を受け入れている大きな病院は1つ(年によって2つ)しかありません。その病院でインターンをしたいという希望はたくさんあるのですが、実際には、その病院で大学(大学院)時代の2週間の研修をしたとか、そこで薬局アシスタントとして働いていたとか、それともなければ、他の病院で研修していた上いい成績でないと難しい状況です。
特にAPCの生徒にとっては、厳しい現状ばかり書き連ねてしまいましたが、先にも書きましたように、仕事や研修の場を得たりするのは、縁があってのことで、がんばって、前向きにやっていると、自ずと道が開けてくると思います。APECを通して薬剤師になって活躍している人もたくさんいますから、がんばってくださいね。
<他の方の経験談>
以下は、パースで薬学大学院に通っていたナルキチさんのブログ「くすりのチカラ from オーストラリア 〜薬学 大学院留学〜」です。
http://farmacia.blog119.fc2.com/その中で、APECを経て薬剤師になり、QLDで病院薬剤師をしているMomoさんが、経験談を投稿して、9回に渡って記載して下さっています。
少し制度が変わっている点もあるようですが、とても参考になりますので、ご覧下さい。
ーーーもうひとつのご質問、APCの対策については、他の薬の質問もたまってきてしまっているので、それが終わり次第、書かせていただきます。上記サイトで私から以上の情報が得られると思いますので、まずご覧ください。ーーー